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| title | We're making music that has its own universe and time |
|---|---|
| author | Ryota Kato/Jiro Dai |
| publication | Snoozer |
| date | 2002/04 |
| issue | 30 |
| pages | 40-45 |
This is an original text copied verbatim from the original source. Do not edit this text to correct errors or misspellings. Aside from added wikilinks, this text is exactly as it originally appeared.
Note: Transcription by Apple's Live Text on a MacBook Pro
BOARDS
OF
CANADA
by RYOTA KATO / JIRO DAI
Interview with MARCUS EOIN & MICHAEL SANDISON
僕らは、それ自身の宇宙や時間を持っているような音楽を作って る。その場所っていうのはつまり、もう一つの現実。それは曲がり 角の向こう側に、鏡の向こう側に、いつも存在しているんだ
スコットランドの山奥でコミューン生活を営むという二人組が誘う、この甘く危険なノスタルジアへの トリップこそが、エレクトロニカ・ブームの最もポピュラーな象徴にして、最大の異端である。 これは顔廃か、それとも現実への変革か?世界中からの熱狂にも、ハーメルンの笛はただ奏でられ続ける。 3年半ぶりの2ndアルバム『ジオガディ」を機に、遂に実現したインタヴューは、e-mailにて行われた
●僕は2001年の(オール・トゥモローズ・パーティーズ) に行ったのですが、あの時点からあなた達は、ニュー・ アルバム制作のために人払い状態に入ると聞きました。そ うした環境は、ボーズ・オブ・カナダ(以下、BOC)の
音楽自体が要請するものなのでしょうか?
マイケル・サンディソン(以下、マイク)「その通り。す べての人との関係を絶つことが必要なんだ。自分達がや っていることに対して、頭をクリアにさせておくには、そ うするしかない。他の人達が周りにいると、音楽が悪い 意味で影響を受けてしまうんだ」
●BOCが、アナログ・シンセのサウンドに拘る理由は何 なのでしょうか?オウテカが使うような、MAXMSPな
どのソフトウェアによるDSPに、関心はありますか?
マーカス・エオイン(以下、マーカス)「僕らは、クリー ンで“モダンな”サウンドの音楽を作ることには興味が ない。誰にでも出来ることだから。今日では、コンピュ ータやソフトウェアが非常にパワフルになったおかげで、 ほとんど何の努力もなしに、プロフェッショナルに聞こ える音を作れる。クリーンなデジタル・ミュージックのサ ウンドは嫌いなんだ。完璧すぎるし、口当たりが良すぎ る。個性がないんだよ。僕らはもっと、過去のある時代 の特徴が聞こえてくる音楽を作りたい一例えば、80年 代初期のテレビ音楽とか。だから僕らは、わざわざ自分 から話を面倒くさくして、サウンドの“グレードを落と ず”ために長い時間かけて作業するんだ」
●オウテカのショーンが、「BOCの音楽はいいけど、僕が 聴くにはノスタルジックすぎるところがある」と言ってい ました。僕個人は、それはオウテカとBOC両方の性質を よく表したコメントだと思うのですが、あなたはこれにど
う応えますか?
マイク「彼らの音楽は大好きだ。常に新鮮だし、常に新 しいものが見つけられる。でも僕らは、彼らとはまったく 異なるバンドなんだ。彼らはパターンに取り憑かれている けれど、僕らはメロディとテクスチャー、音の手触りに 取り憑かれている」
●あなた達にとって、アシッド・ハウスやエクスタシーの カルチャーはどのような体験だったのでしょうか?現在
でも、そこからの影響を受けていると思いますか?
マーカス「初めてアシッド・ハウスがやって来た時に、ご く短い間、夢中になった。だけど大きな影響を受けては いないね」
●BOCの音楽は基本的にメロディ・オリエンテッドだと 思います。その認識が正しいとすれば、あなた達にとっ
てメロディとは、主に何を表するものなのでしょうか?
マイク「僕にとって、メロディは、人間の感情に対して 極端に強く作用する、ある種の言語なんだ。絶対に言葉 には出来ないことがらを、表現することの出来る言語。ど んなバックグラウンドを持つどんな人にも、その言語は 理解出来るんだ」
●では、BOCの音楽において、“ビート”とは何を表現、あるいは代表していると言えますか?
マイク「句読点」
●“musicismath(音楽は数学だ)”という曲名は、あなた達の音楽に対する態度表明の一つなのでしょうか?それともアイロニーなのでしょうか?
マーカス「両方だと思う。というのも、第一に僕らはハ ートからメロディを生み出すことに関心があるけれど、同 時に、それを裏付けるサイエンス(科学、知識体系)に も魅せられているから」
●サイケデリック・カルチャーは、人種やセクシュアリ ティ、階級や仰といった、様々なバリアを突き崩して いくものだったように思います。BOCと、サイケデリッ ク・カルチャーとの関係は、どのようなものなのでしょ
うか?
マイク「僕らにそれは当てはまらないと思う。サイケデリ ック・カルチャーと言うと、僕はヒッピー・カルチャーや ニューエイジ・カルチャーのことだと思っているんだけ ど、それは僕らとはまったくかけ離れているからね。明ら かに僕らはラヴ&ピース的ではあるけれど、ニューエイ ジ・カルチャーにはアイデンティファイしてないんだ。僕 らがサイケデリアに興味を持っているのは、純粋に、そ の生物学的なプロセスと、そこから生み出されるアート、 という観点においてだね」
●ポップ・ミュージックは、オーディエンスにある種の共 同体的な感覚を与えるものとして誕生しました。60年代 のサイケデリック・カルチャーは社会の外部にある新た な共同体を志向しましたし、ダンス・ミュージックのか かるクラブには一晩限りの共同体が生まれるようなとこ ろがあると思います。では、BOCの音楽は、コミューナ
ルな性格を(部分的にでも)持っていると思いますか?
マーカス「わからないけどおそらく、ある特定のタイプ の人がそういうものにアイデンティファイしているんだろ うな。僕らが世界について思考するのと同じ考え方をす る人たちが、世の中には大勢いるーーそして彼らは、僕 らのような音楽への関心を共有することによって、集ま ってくるーーそう僕は思いたいね」
●1969”という曲タイトルがありますが、この年号は、
あなた達二人の生まれた年を表しているのでしょうか? それとも、歴史的・文化的な事実への言及だったりする
のでしょうか?
マイク「僕らはまだその年には生まれてなかったよ。ある アメリカの宗教グループの歴史における、特別な年号の ことを指してるんだ」
●上の曲では、「inthesunshine」という声を聞き取るこ とが出来ます。この言葉は何を意味しているのか、教え
てもらうことは出来ますか?
マイク「その宗教グループがその当時に感じていた、希 望と確のフィーリングを、反映させたかったんだ」
●以前にも“sixtyniner”という曲がありましたが、BOC にとって「1969」というのは、特別な感慨をもって振り
返る年だったりするのでしょうか?
70年代というのは、ある意味で、一つの黄金時代の終焉だと思えるんだ。それは、 利己主義と物質主義が蔓延する、新しい時代の始まりだった。90年代末の二度目の
ウッドストック・フェスティヴァルが、どれほど失望させられるものだったか。
そう、つまり、僕らのジェネレーションというのは、ずっとスポイルされてきたんだ
マーカス「あのタイトルはダブル・ミーニングで、二重 の意味があるんだ・・・・・少なくとも英語ではね。つまり、あ のトラックの元になったのは、1969年に経験した自分の 最初の性体験を、ある男が描写したテープなんだよ」
●翌年の1970年、ワイト島でのフェスティヴァルが歴史 的な失敗に終わるように、その頃は「ヒッピー・カルチ ャーの終焉の季節」として記憶されています。そこに何
らかの個人的な記憶を重ねているところはありますか?
マーカス「特に個人的な記憶があるわけじゃないよ。 1970年には僕はまだ一匹の精子だったし。でも確かに僕 らは、あの時代のカルチャーに入れ込んでいる。70年代 というのは、ある意味で、一つの黄金時代の終焉だと思 えるんだ、実際。それは、利己主義と物質主義が蔓延す る、新しい時代の始まりだった。90年代末の二度目のウ ッドストック・フェスティヴァルが、どれほど失望させ られるものだったか、考えてみるだけでもわかるだろ。あ の時キッズたちは、会場をめちゃくちゃにし、車を燃や し、レイプまで犯した。そう、つまり、僕らのジェネレー
ションというのは、ずっとスポイルされてきたんだ」
●安直な対比ですが、BOCの音楽は、陽光の下と、夜の 闇とでは、どちらが似合うと思いますか?また、夏と冬
とでは、どうでしょうか?
マーカス「真冬の、明るい陽光の中」
●これまでBOCのアートワークは、ブルーを中心とする 寒色系でした。ところが新作では、大胆に赤や黄色とい った暖色をフィーチュアしています。ここには、何らか
の意味が込められていますか? マイク「このアートワークは、火と、宗教的なイコノグ ラフィー(図像)とのコンビネーションを、表したかっ た。万華鏡の映像における幾何学的バターンというのは、 宗教画によく見られる完璧なシンメトリー(対称性)に 似ているんだよ。そしてすべてが、赤く燃えさかる夏の儀
式、という一つのイメージに統合されているんだ」
●BOCの音楽を、自分ではどのようなシチュエーション
で聴きますか?
マーカス「僕らは自分達の音楽を、いつも聴いているよ。 リリースされたことのない曲が巨大なアーカイヴになっ ていて、それを聴き直すのが大好きなんだ。僕自身が聴 いていて一番楽しめるのは、完璧に独りっきりの時だと 思う。野外に出ている時とか、車を走らせている時とか。 自分のイマジネーションを自由に広げられるんだ」
●あなた達の楽曲タイトルはいつも神秘的なものです。そ こに、何らかのケルト文化からの響を見て取ることは
可能ですか?
マーカス「ケルトの影響を受けたものを意識的に作った ことは、これまでのところはないと思うんだけど、実際、 伝統的なスコットランド音楽の中には好きなものもある ね。特に、アカペラのゲール語の歌。まるで逆回転にし た音楽みたいに、本当に奇妙に響くんだ。どこか超自然 的な効果をもたらすんだよ」
●以前、モグワイのスチュアートにインタヴューした時、 「スコティッシュやウェルシュの文化はすごくポジティヴ だけど、未だにどこか負け犬(アンダードッグ)っていう 感覚が付きまとってる」と語っていたんですが、彼の言
葉に同意するところはありますか?
マイク「その通りだね。僕はスコットランド人についてし か話せないけど、スコットランド入っていうのは、外の世 界に出ていって、ちょっとでも上昇してやろう、ってい う前向きな志向が全然ないんだよ。すごくフレンドリー で、知的で、親しみやすい連中であるっていうのは事実 なのに、もっと良くなろうってお互いに励ましあうことさ えしない。始まってもいないうちから負けちゃってるよう な、敗北主義的アティテュードがあるんだ。多分、一般 的に見て、周囲の国に比べてかなり貧しい国だからだと 思う。歴史の最初から最後まで、イングランド人に利用 され続けたおかげで、ずっと貧しいままの国だからね」
●BOCの作品には、声”によって、こっそりとメッセー
ジを忍ばせておく、という手法を感じることがあります。
実際、そのようなアングルはあるのでしょうか? マーカス「もちろん。僕らは、音楽の中にいろんなもの
を隠しておくんだ。君たちに発見してもらうためにね」
●ケルトの歴史の多くは、悲劇の歴史だと言われます。彼 らの多くは文字を持たなかった。あなた達は、その彼ら の歴史を語り継ごうとしているーーそんな意識はありま
すか? マーカス「アーティスティックな意味では、自分達がケ ルト的であるとはまったく思ってないんだ。僕らは、もつ とずっと遠く離れたところからの影響を受けている。で も、スコットランド人であることについては、確かにいく らかの誇りを持っているよ。ケルトの伝統や言語といっ たものの継承を支持しているし、スコットランドの政治
学には関心があるね」
●レディオヘッドの「アムニージアック」に代表される ように、現代文明への背反的意識に駆られたアーティス トの中には、そのカウンター的要素として、古代文明の 引用を取り入れることがあります。BOCにも、そのよう
なニュアンスはありますか?
マイク「自らの文化を、過去と比較せずに分析するのは、 不可能だと思うんだ。例えばこの2002年を、第一次大戦 や第二次大戦の時代と比較すると、僕らは大きな平和の 時代に生きている、と言うことも出来る。だけど、ドル イドたちや農夫たちが暮らしていた古代と比較すれば、 我々は野蛮な時代に暮らしているように見える。全般的 に見て、僕らはアーティストとして、この今日の世界を、 たくさんの可能性に満ちた世界だと考えているけれど、で も同時に、膨大な数の恐ろしい脅威に満ちた時代だとも 思っている。僕ら自身はすごくポジティヴな人間だけど、 僕らのジェネレーションがこの巨大なパラノイアの時代 にいかにして生まれてきたのかーーそして僕らはそのこ とを、映画や本や音楽といった自分達の文化の産物に、ど のように反映させているのかーーっていうことに興味を 持っているんだ」
●ケルトやネイティヴ・アメリカンを始め、多くの古代 人の文化の持つ、「自然は誰の所有物でもない」という思 想に共感するところはありますか?
マーカス「イエス。この自然と環境は、君や僕よりも、そ していかなる政府や国やジェネレーションよりも、長く 存在してきているんだ。そしてこれからもずっと存在し ていくべきだけれど、そのためには敬意を持って接しな きゃ無理だね」
●では、ドルイド数とキリスト教とのシンクレティズムに
ついて、あなた達の見解がもしあれば教えてください。 マイク「僕が想像するに、現在世界で仰されている宗 数はすべて、実いろんな別々の古代宗教のアマルガム だと思う。だからこそ、宗教における極端な原理主義と いうのは馬げているんだ。現代の儀式や教えが、もと もとの神の言葉でありうるわけがないんだからね。そう したものはすべて、長い年月を経るうちに、その時代時 代の体制の都合に合わせて調整され、混合され、編集さ
れてきたっていうことなんだ」
●ケルト美術の渦巻模様や、遺跡や装飾品によく出てく る組紐模様は、エターナル・ノットと呼ばれ、ケルト人 の「始めも終わりもない死生観」を表していると言われ ます。BOCの音楽も、楽曲それぞれはすごく個性的なん だけれど、聴き終わってみると、まだずっと音楽が続い ているような感覚を聴き手に与えてくれます。そこに何
らかの関連性は存在すると思いますか?
マイク「渦巻模様について君が言いたいことは、理解出 来るよ。僕らの曲における、反復したり循環したりする エレメントのことだよね、きっと。アルペジオとか・・・・・。 僕らは、多くの場合、まるで永遠に続いていくみたいに 聞こえるよう、トラックをデザインしている。レコードか ら聞こえる部分が、まるで巨大な無限の何ものかの、ほ んの小さな一部分であるかの如く思えるように、エディ ットするんだ。しばらくの間ふっと浮かんできたかと思う と、また自然に消えていくーあたかもそんな風にね。そ うすると、どこか別の場所で、それがいつまでも鳴り続 けているような、そんな気がしてくるんだ。僕らは、それ
僕は、自分なりのユートピアについてのヴィジョンを思い描いている。きっとそれは、 人々がそれぞれの差異を持ちうるようにしっかり教育を受けていながら、暴力に訴える
代わりにお互いにゲームを挑みあうような、そんな未来。そこでは、木々がたったの
10秒間で30フィートにまで育ち、色の違う10個の太陽が一日中輝き続けているんだ
自身の場所、それ自身の宇宙や時間を持っているような 音楽を作っている。その場所っていうのはつまり、もう 一つの現実 この今という時代を抽象化した、現実の ファンタジー・ヴァージョンみたいなものだね。だからま るで、別の場所や時間の中へと、踏み入っていくような 気持ちになるんじゃないかと思う。その場所は、曲がり 角の向こう側に、鏡の向こう側に、いつも存在している んだ。ポピュラーなファンタジーには、必ずそんな作用 があるよね。そう、人は、音楽とともに自分のイマジネ ーションを解き放つことで、いつでも好きな時に、自分 自身のライフからしばし離れることが出来るんだ」
●ヒッピーイズムをどのように捉えていますか?
マーカス「“ヒッピーイズム”と僕らの間にある、唯一の リアルな繋がりは、1960年代に花開いたすべてのファン タスティックな音楽。僕らはそれについてよく知ってい るし、大好きだから」
●60年代にヒッピーのグルとされた作家リチャード・ブ ローティガンは、「西瓜糖の日々』という作品で、ある種 の理想郷を描きました。それは、「IDEATH」という名の 理想郷で、つまりミーイズムを始めとするエゴを殺す(な いし縮小する)ことにより成立する、平和で変化のない 世界でした。あなた達は、そのような理想郷をどう思い
ますか?肯定しますか?
マイク「でも、それは同時に、ゾンビだけが住む世界に もなりうるよね。一人ひとりの個性もなく、何の驚きも なく、オリジナルな思想もなく、進歩もない。摩擦によ ってのみ、生まれる進歩というのもある」
●では、BOCの音楽は、何らかの理想郷を実現させるも のだと思いますか?そうだとすれば、それはどのような
ユートピアですか?
マイク「僕らの音楽が、今ある現状に対するオルタナテ イヴ(別の選択肢)を示すものであってほしいと、僕は 思う。つまり、僕が作曲するときに望むのは、現実世界 のこの単調なリアリティから切り離された音楽であって ほしい、ということなんだ。そして多分、そのとき僕は、 自分なりのユートビアについてのパーソナルなヴィジョ ンを思い描いているんだろうな。きっとそれは、人々がそ れぞれの差異を持ちうるようにしっかり教育を受けてい ながら、暴力に訴える代わりにお互いにゲームを挑みあ うような、そんな未来。そこでは、木々がたったの10秒 間で30フィートにまで育ち、色の違う10個の太陽が一日 中輝き続けているんだ」
●BOCの音楽を特徴づけているのは、明らかに世間とは 違う、ゆったりとした時間の流れをデザインしているこ とだと思います。「自分達の音楽によって、聴き手の時間
感覚に何らかの“変更”を促したい」
そういった意識 はあなた達のアングルにありますか?
マイク「イエス!それこそ、トリックの一つなんだ。サ イケデリックスの最も明白なエフェクトの一つだね。音 楽によって僕らがそれを目指すためには、たくさんの手 法のリストが挙げられる。例えば、音楽をスパイラル(渦 巻)のように構成したり。アルペジオを使ったり。注意 深く耳を傾ければ傾けるほど、どんどん膨れ上がっていく ようなディテールを込めたり。そして、レコードが鳴り終 わった後も頭の中で延々続いていくみたいに感じるよう な、メロディのループを作ったりいくつか転調を配 置したり、ある主題をまったく未解決のままに放置した
りすると、そういう効果が生まれるんだよ」
●BOCのアートワークや曲タイトルには、特に前作EP を始めとして、田園的(rural)なものへの言及が数多く 見られます。「ruralなもの」とは、単純に言って、文明の 外部だと言うことが出来ると思いますが、あなた達の中
にそのようなアングルはありますか?
マーカス「うーん、曲を書くときに、それがどこか他の環 境で、他の誰かに聴かれるところって、想像したりはし ないんだ。だから、僕らにとっては100パーセント、僕ら 自身のまさに目の前にある環境や、自分達の生活、記憶 なんかと関係している。それがたまたま、とても田園的 な影響となっているんだよ」
●BOCのruralness(田園性)とは、marginality(社 会の主流から取り残されること、無視されること、辺境
や周辺にあること)の表現と捉えることは可能ですか?
マイク「それは単に、僕らのいる場所を、そして僕ら自 身を、反映しているんだ」
●では、BOCの音楽を、積極的に周辺的であろうとする、 あるいは周辺的であることを肯定する音楽である、と言
うことは可能ですか?
マイク「音楽を作るとき、僕らが一番想像しないのは、レ コードが店に並んでるところとか、リスナーがレコードを ハイファイで聴いてるところなんだ。僕らはただ、僕らの スタジオの中の僕らだけの小さな世界で、やることをや ってるだけ。それが地球の反対側で誰かに聴かれてるっ てことを知るときでさえ、やっぱり具体的には想像しに くい。だから、僕らが人々からどのように見られているか ってことには、まったく影響されることがないんだ。ト ラックを作ってるとき、僕が想像するのはただ、自分と
マーカスがそれを聴いているところでしかない」
●BOCの音楽は、無意識の領域や、既に忘れたつもり になっている記憶の領域に、アクセスしようとしている
というようなアングルはあなた達にあるでしょうか?
マーカス「僕らは既にそうしているよ。ある特定の記憶 への鍵になりうるような、音楽的なトリガーや引用を、曲 に取り入れることでね」
●BOCの音楽は、何らかの“逃避”、エスケイプを提供
していると思いますか?
マイク「そうであってほしいね」
●資本主義の社会において、ある種のエスケイプやサボ タージュというのは、最も本質的な危険さを秘めている、
という言い方に同意しますか?
(無回答)
●徹底してノスタルジックな表現は、直接的に現実への 変革を促しうる→そうした視点は、あなた達の中にあ
りますか?
マイク「質問の意味にちょっと自信がないんだけど、今 この時の現実を変容させたりとか、少なくともそれに対 する僕らの知覚に変化を加えたりすることは、可能だと 思ってる。結局それしかないんだよ。自分のムードを変 えるってこと。もし、ふっと感じた匂いや、かすかに聞こ えた旋律が、生き生きとした記憶を呼び起こせるとした ら、音楽にはほとんど時間を超越する力がある、って言 えるんじゃないかな」
●音楽表現の中に、バッド・ヴィジョンや警鐘的なイメ ージを含ませることに、意識的ですか?意識したことが ないとしたら、今後、そのようなことを試してみる可能
性はありますか?
マーカス「イエス。もちろんだよ。悪夢や恐怖を取り入 れなければ、それは僕らの精神を忠実に反映したものに はなりえないから。だけど僕らが今までやってきたのは、 ダークな要素を、音楽の中に埋めこんでしまうっていう 方法なんだ。そうすると、もし望むなら、ただ美しい情 緒的なメロディとして楽しむことも出来るし、分析し、解 きほぐしていくことも出来る一すると、ダークな顔が 現れて、君をじっと見つめ始めるんだ」
●サンフランシスコにあるフランシス・フォード・コッポ ラのスタジオの名前、「ゾエトロープ」を曲名に引用した
のは何故ですか?
マイク「僕らは引用してないんだ。あれは、あるジャー ナリストがでっち上げた話さ。あれは、初期のアニメー ・ション装置(*回転のぞき絵)にちなんで名付けたって わけ」
●アルバム・タイトルの『geogaddi」(入り江の王、地 の王?)というのは、どのような存在のことを指すのでし
ょうか?
(無回答)
(BOC「亮太、ジロー、ありがとう」)
この無限と夢幻のアナザー・ワールドは、誰がために鳴るのか?
隠遁者デュオが描く「鏡の国」に迷いこんだ、アリスならぬヨゴレ編集部の珍道中、「南青山異次完談24時」
文=田中宗一郎✕加藤太✕基次郎
ダイ「うおー、カッコいいじゃん!!メールの返事!グッ
とくるねー」
加藤「(笑)質問作ってて、妄想炸裂かなあって気もして
たんだけど、すごい面白かったね」
田中「考えてることがしっかりあるから、こっちの仮説
がかなり暴走してても、ちゃんと引っ掛かりのある答え
が返ってくるし、それが必ずしも的外れでなかったりし
てんじゃん?でも、やっぱ鋭いよねー、俺達」
ダイ「出た、必殺の自画自賛!」
加藤「でも、エレクトロニカの人達って、基本的にあん
ましゃべりたがらないっていうイメージもあるから、驚い
たは驚いたかも。特にボーズ・オブ・カナダなんて、海外
誌見てもネット見ても、ほとんど発言見かけないような
存在だったから」
田中「1stアルバムが、スカムとワープとの共同リリース
になったってことだけで、騒がれたぐらいだもんな」
ダイ「でも、ボーズにこんな風に真剣に答えられちゃう
と、そういうエレクトロニカの匿名性を隠れ蓑にして、気
分で打ち込みやってるような人達は、ショック受けるん
じゃないかな。ちょっと可哀想になるなあ(笑)」
加藤「確かに。テクノっていうのはフィーリングだけだ
からいい、っていう言い方もあるけど、だからって気分
で作りゃいいかっていうと、そういうわけじゃないもん
ね。おそらく本当に気分だけでプログラミングされたも
ので、聴くほうにとってはどこにも参照点持てない味
な音楽って、エレクトロニカには山ほどあるし」
田中「だね。やっぱり快楽の参照点はないと楽しめない」
加藤「あとは、問題意識の持ち方が、「テクノ以降』って
いうスパンじゃなくて、音楽でいえば60年代から始まっ
てる歴史の中で考えてるよね。そこはやっぱり、欧米に
は歴史がちゃんとあるっていうか」
田中「日本の音楽ジャーナリズムには、あまりにも歴史
が欠けてるからなあ。俺は最近、もう少し正史らしい正
史を作んなきゃっていう意識が、すごいあるんだよね」
加藤「まあ、ポストモダンもオルタナティヴも、それな
田中「そう。それも普通に寝るとかじゃなくて、窮屈な
飛行機の中で眠るために聴くには、最適。俺の中での「飛
行機の中で眠るときに聴くレコード』は、ボーズと、ザ・
フーの「バイ・ナンバーズ』」
加藤「あんまり意味がわかりませんが(笑)」
田中「要は、最も不快な状態におかれたときに、完璧に
現実を忘れるための音楽。だから、家でチルしたり、リ
ラックスするっていう聴き方とは、ちょっと違う」
ダイ「『ドラゴンクエスト」の戦闘シーンで、攻撃したり
魔法使ったりする他に、「なにもしない」ってコマンドが
あるじゃないですか?僕としては、あんな感じ。それに
近いですか?」
田中「いや、文字通り、ドリーミーっていうか。だから、
いわゆるエレクトロニカって、“リズム”と“音色”に比
重が置かれてるじゃん?そういうのって、やっぱり直接
的に感覚とか肉体に刺激を与えて、興奮させたり、逆に、
落ち着かせたりするわけだろ。でも、ボーズの場合、リ
ズムは基盤でしかなくて、ポイントは“メロディ”と“和
音”なわけでさ。それは、やっぱりひたすらゆるやかにイ
マジネーションを刺激するんだよね」
ダイ「ああ、やっぱりすごく映像的だし」
田中「だね。どこかミニマル・アートみたいなヴィジュ
アルの設計図があって、それをむしろ音が模倣してる感
じさえする」
加産「あ、その辺りが、下手すると、ちょっと稚拙に思
う人がいたりするとこなのかな」
田中「ハラカミさんとかが、ボーズにまったく興味を持
てないのはよくわかる気がするな」
ダイ「それで言うと、僕はやっぱ、1stのヴィジュアルが
好きなのかもなー。どこかイノセントというか」
加藤「へえー。ヴィジュアルのイメージの完成度が高い
方がいいじゃん。だから俺、新作は大好きだよ」
田中「うん、やっぱ絵が上手くなった感じはするよな」
ダイ「ボーズが屏風に上手にボーズの絵を描いた?」
加藤「うわっ、これで終わり?!」
Note: Translation by ChatGPT-o4
BOARDS
OF
CANADA
by RYOTA KATO / JIRO DAI
Interview with MARCUS EOIN & MICHAEL SANDISON
"We create music that seems to have its own universe and time. That place is another reality. It always exists just around the corner, or beyond the mirror."
This sweet and dangerous trip into nostalgia, invited by a duo living communally in the mountains of Scotland, is both the most popular symbol and the greatest anomaly of the electronica boom. Is this escapism, or a transformation of reality? Despite the worldwide enthusiasm, the pied piper's tune continues to play. The long-awaited interview, conducted via email, was finally realized with the release of their second album in three and a half years, "Geogaddi".
"The 1970s, in a sense, marked the end of a golden age. It was the beginning of a new era, one rife with selfishness and materialism. Think about how disappointing the second Woodstock Festival in the late '90s was. Our generation has always been spoiled."
I have a vision of my own utopia. I'm sure it would be a future where people, well-educated to embrace their differences, would challenge each other to games instead of resorting to violence. In that future, trees would grow to 30 feet tall in just 10 seconds, and ten suns of different colors would shine all day long.
2002.04 Snoozer No. 30, p. 45
"For whom does this otherworld of infinity and reverie resound? The editorial crew, not Alice but the grubby ‘Yogore' team, blunders into the ‘Mirror Country' painted by the reclusive duo—‘Minami Aoyama Other-Dimension Talk 24 hrs.'"
By Soichiro Tanaka × Futoshi Kato × Jiro Motojiro
Dai: "Whoa—this reply email is so cool! Really hits home."
Kato: "(laughs) When I drafted the questions I thought I might be overdoing the fantasy angle, but their answers were genuinely interesting."
Tanaka: "Since they have clear ideas, even if our hypotheses ran wild, their replies always had something to grab onto—and they weren't off the mark. Shows how sharp we really are, huh?"
Dai: "There it is—the deadly self-praise!"
Kato: "I was surprised because I'd heard that most electronica folks don't talk much; especially Boards of Canada—they're almost silent in overseas mags and online."
Tanaka: "Their first album caused a stir just by being co-released on Skam and Warp."
Dai: "But getting such earnest answers from BoC might shock those who use the anonymity of electronica as a cloak, programming on a whim. Kind of makes me feel sorry for them (laughs)."
Kato: "True. Some say techno's fine because it's all about feeling—but that doesn't mean you can write by mood alone. There's lots of electronica utterly devoid of reference points, so it means nothing to the listener."
Tanaka: "Exactly. You need points of reference for pleasure. And BOC view music history not from the ‘post-techno' span but from the Sixties onward. That sense of history really exists in the West."
Tanaka: "Japanese music journalism lacks that history. Lately I feel a strong need to create a more accurate ‘official history.'"
Kato: "Postmodern, alternative—all that began back then too."
Tanaka: "It's perfect for sleeping in a cramped airplane. For me, the record I sleep to on planes is BoC and The Who's By Numbers."
Kato: "I don't really get that (laughs)."
Tanaka: "It's the music that lets you completely forget reality in the most uncomfortable state. So it's different from ‘chilling' or relaxing at home."
Dai: "In Dragon Quest's battle menu, there's a ‘Do Nothing' command, right? That's kind of like it, yes?"
Tanaka: "No, it's literally dreamy. In so-called electronica, rhythm and timbre are emphasized to directly stimulate the body—either to excite or calm. But for BoC, rhythm is just the foundation; the focus is on melody and harmony, which gently stimulate imagination."
Dai: "Yeah, it really is very cinematic."
Tanaka: "It feels like there's a minimalist-art visual blueprint that the sound imitates."
Kato: "I can see how some might find that a bit naive."
Tanaka: "I get why someone like Harakami-san couldn't connect with BoC at all."
Dai: "Thinking about it, I actually love their first visuals—they feel innocent."
Kato: "I'd think the higher the visual finish, the better—so I love their new work."
Tanaka: "Yeah, it does feel like their graphic skill has improved."
Dai: "Did BoC paint themselves well on a folding screen?"
Kato: "Whoa, is that it?!"