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Vintage Psychedelia


title Vintage Psychedelia
author Riow Harada
publication Bounce
date 2005/10/25
issue 270 (2005/11)
pages 28-29



"Vintage Psychedelia" was an interview (in Japanese) by Riow Harada originally published October 25 2005[1] in Bounce magazine Number 270 (Nov 2005).


Original Text[edit]

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Vintage Psychedelia


いまいる地平よりも、ずっと遠い世界から届けられるような、はかなく、荘厳で、淡く、無邪気で、聴いたことはないのに懐かしい、ヴィンテージなサイケデリア。耳を澄ませば、ボーズ・オブ・カナダの蠢く音がする……


文/リョウ 原田


古いロード・ムーヴィーみたいに


スコットランドに暮らすマイク・サンディソンとマーカス・イオンによる音響創作ユニット、ボーズ・オブ・カナダ(以下BOC)はどうにも不思議な存在だ。デビュー当時はマイ・ブラディ・ヴァレンタインを引き合いに称賛を受けたが、彼らは決してロック・バンドではない。また、前作『Geogaddi』は〈エレクトロニカ〉というカテゴリーの決定盤としての評価も受けたものの、マイクは「僕らはラップトップ・ミュージックを作ったことがないし、そういった音楽をあまり聴かない」とまで話しているのだ。

 ともかく、新鮮で懐かしい宅録傑作を提供してきたBOC。今年に入ってからはベック“Broken Drum”の傑作リミックスを手掛けていたが、3年ぶりとなる新作『The Campfire Headphase』での彼らはそこから翻って、懐かしくも新鮮な音楽を提供している。そこにあるのは2人がストロークするギターの音色、ゆったりと振られるシェイカー、チューニングの緩んだスネアの軋みなどが散りばめられた、木造のサイケデリア。マイペースを貫く彼らはこう語る。

 
「『Music Has The Right To Children』は、ヘヴィーにシンセを使ったアルバムだったし、『Geogaddi』は比較的サンプリング中心のアルバムだったから、新しいアルバムはまた異なる質感のものにする必要があったんだ。それと同時に、僕らの他の作品よりも古くてダーティーな印象のサウンドにしたかった。それで、ヴィンテージのロード・ムーヴィーみたいな音を作るためにギターを使うというアイデアが浮かんだってわけさ。ジェイムス・テイラーやジョニ・ミッチェルみたいなサウンドを回想させるような感じだね。だから、ジャカジャカしたギターの乾いた音色には物凄くこだわった。BOCをやる前はもっとギターを使っていた時代もあったんだよ。クラウト・ロックやガレージ寄りのサウンドをやっていた80年代の雰囲気をいくらか今作に採り入れたかったんだ」
(マーカス)

 

いわゆる〈エレクトロニカ〉という枠組みに収めるには、若手ラップトップ・アーティストと世代を隔てているBOCは、そもそも80年代から活動するヴェテラン。ゆえに今作では彼らのめざす〈ヴィンテージのロード・ムーヴィーみたいな音〉を実現するために、多様な音楽体験のひとつを取り出してみたということだろう。例えば“Dayvan Cowboy”での幾重にもフィードバックするギターにシューゲイザーの影を見い出す人もいるかもしれない。



別の次元から流れてくる音楽



 一方、音の骨格を支えるビートに関しては、初期作品で見せていたようなヒップホップ感覚もある。

「いい感じの上下感と心地良くダッキングする感じのノリを作り出す、あのタイトなスネアの音を得るまでには凄く労力を費やした。ウッディーでエフェクトをかけていないサウンドは、スティーヴィー・ワンダーのような70年代の作品でよく聴けたけど、ここではスロウダウンしたヒップホップのビートみたいなしっかりしたリズムにするために使ったんだ。僕らはパブリック・エナミーが『Yo! Bum Rush The Show』をリリースした頃にヒップホップにのめり込んだんだけど、実際にそういうビートをプロデュースしたいって思うようになったのは、93年にソウルズ・オブ・ミスチーフを聴いた時からだね」
(マイク)



クラウト・ロック、シューゲイザー、ニュー・スクール以降のヒップホップ……『The Campfire Headphase』の音の隙間からはさまざまな背景(や世代観)を見い出すことができそうだが、一方でそうした文脈はあくまでも〈気配〉を感じさせる程度に止められている。サウンドの総体はいつものように、水彩絵の具で何層にも濃淡をつけた風景画の如く、シンプルでおぼろげだ。例えばアルバムの終局を飾る“Farewell Fire”ではパイプオルガンのような荘厳な響きを聴けるが、それはオルガンそのものの音ではない。

 
「僕らが凄く凝った響きを持つ音をよく作るのは、それが何なのか簡単に聴き分けられないようにするためさ。オルガンみたいな音色のなかに人間の声や他の何かに聴こえる音でメロディーが入っているのって美しいと思うんだ。〈誰かがそれを弾いている〉っていうイメージを取り除いてくれて、別の次元から音楽が流れてくるっていう、魔法みたいな、現実から隔離された感覚を作り出してくれるからね」
(マイク)

 

川のせせらぎや、ヴィンテージな質感のノイズ。その音の背景にある〈現実から隔離された感覚〉とは、最近女の子の父親になったというマイクの言葉を借りるなら、こういうことかもしれない。

 
「子供の視点はおもしろい。例えば、蛇口から流れてくる水にずっと手を突っ込んでいたりさ。重力が水を下に引っ張っていることとかが、彼女にはまだ理解できないからね。僕らの音楽も、ふだん見えているものを振り返るような、そういった視点を常に意識しているから、たくさんの細かくて微妙な要素を取り込んでいる。だから、ヘッドフォンを着けて世界から自分を遮断した状態で聴いてもらえば、数多くの微小なディテールが露わになってくるんだ。それは世界を発見していく過程で、トンネルの中から見える外の光を無我夢中で見つめている子供の視線にも似ていると思うよ」
(マイク)


  たいていの音楽は聴き尽くした──そう自負する方にこそ、この『The Campfire Headphase』を、ぜひヘッドフォンで聴いてもらいたい。目の前にあるものを不思議と思える、そんな感覚をBOCがきっと呼び覚ましてくれるだろうから。



Translated text[edit]

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Scans[edit]

References[edit]

  1. https://web.archive.org/web/20070203181730/http://bounce.com:80/interview/article.php/2234/